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『───我々は何処から来たのか、我々は何者か、我々は何処へ行くのか』

 

十二月下旬。

一人の男がこの世を去った。

 

榛原翡翠。

遺伝子学者として日本で功績を残した彼は晩年、テロリストとして世界中で暗躍。

紛争地帯での武力介入。

民族間での紛争の誘発。

途上国での小型核弾頭の投下。

数え切れぬ悪行を犯し、世界を恐怖の渦に陥れた男。

彼の訃報を耳にした人々は、失われた平和の到来に強い安堵を覚えていた。

 

数日後、新宿区の病院で一人の青年───上城幸也が目を覚ます。

頭部に裂傷。全身に打撲。

傷だらけで運ばれた彼は記憶喪失を患っており、

自分が何者で、どうして怪我を負っているのか、何一つ覚えていなかった。

そんな彼の前に突如、命を狙う謎の女が姿を現す。

友人───水無瀬千佳の助けを借り、命辛々逃げ切った幸也は、

自身の記憶を紐解く鍵を見つけるべく、自らの所持品を確認する。

出てきたのは───

数日前に亡くなった、榛原翡翠が残したとされる暗号であった。

 

───やがて彼は知る。

既に自分が、多くの陰謀と策略の渦中に身を投じていたことを。

決して、振り返ることの許されない選択を取ったことを。

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