終わりに
改めて全編視聴お疲れ様でした。
───雛沢奏人が全てを取り戻り、現実という惨劇に立ち向かうまでの物語、その終焉。
キャストの方々、ルサオさん、聴いて下さった方々の心に大きな爪痕を残せたと信じ、忘却のオルフェウスはこれにて幕切れとさせて頂きます。
本当に一年間、ありがとうございました!!!
あと、俺も偉いぞ!!!
ここからは、企画者月社零が、本編で語られなかった設定や裏事情など明かせる範囲で明かしていきます。ネタバレ大いに含みますので、見てない方は先に本編の視聴を推奨します。
本当、あれだけ長かったのにまだあるのかよw
まぁ、ここは大目に見てください。
物語のテーマ
テーマは「真理探究」、サブテーマは「罪」と「罰」、「生」と「死」、「信用」と「疑念」があります。何故真理探究かと言いますと、人間は本能的に「真理」に固執する生き物であると考えるからです。至極当然のことだと思います。例えば、問題集で間違えた解答をした場合、正しい解答は何かを調べる。好きな子に振られた場合、どうして振られたのか知りたくなる。芸能人が自殺しました、という記事が出たとしたら、何となくでも知っておきたくなる。作中、「真理」を「現実、真実、解答、真なる存在」などで言い換えてきましたが、人間とは自他問わず、好奇心に駆られるまま、混沌とした世界を細分化する生き物であり、文章として落とし込むなら推理系が一番と考えたのが「忘却のオルフェウス」という作品自体の始まりです。丁度クローズドサークルに触れておきたいと思ってたのでw あ、因みにサブとなる事柄には書き進めていてテキストに沿う物を持ってきた。それだけです。そこまで深くは考えてません。
このテーマに至るきっかけとかあったんでしょう?って聞きたいですよね。ありますよ、そりゃあ。幾つかありますが「フェイクニュース」「ゴシップ記事」「炎上」です。は?全部違うだろ、と思うでしょうが、全てに共通するのは「正しい」と「正しいと信じる」の違いです。多くは読者側で生ずる問題ですが…例えば皆さん、「神様はいない」は「正しい」ですよね。でも「正しいと信じる」人も一定数いますよね。同じように「〇〇は罪を犯していない」が「正しい」のかもしれないのに、フェイクニュースなどを介して「〇〇は罪を犯した」を「正しいと信じる」人も一定数いる。それは間違った情報ではなく、正しいと信じたい情報なんだと思います。正しい物を知りたいと思った結果、そうしたニュースに行き着いただけ。「正しい」と「正しいと信じる」。この差異を表現するのは、情報化の進んだ現代にぴったりだなと思ったんです。
ここまで考えて書いてる人、声劇界隈にはいないと思いますし、つくづくボイスドラマに向いてないですがねw まぁ、テーマの言及は以上です。
タイトルの意味
察しの良い方はもう既にお気づきかと思われますが、念のため。
忘却のオルフェウスというタイトルは、直訳すれば忘却してしまったオルフェウス、なんて意味合いになります。作中でも雛沢貴樹扮するオルフェウスが出てきましたが、物語全体を総括して、ギリシア神話で冥府下りを経験した真のオルフェウスをモチーフにした人物がただ一人存在します。
雛沢奏人です。
「冥府から抜け出すまでの間、決して振り返ってはならない。振り返ってしまえば、目の前にある大切な物まで亡くしてしまう」
冥府には罪や罰、恐怖、過去の柵、作中の記憶世界など様々な意味合いが込められます。物語終了後、彼自身は抜け出せたのかもしれないし、今も尚足掻き続けているのかもしれない。それでも、彼が一人のオルフェウスとして、神話とは異なる、恐怖から逃げず前へと突き進む選択を取ったのは間違いありません。
なので作中には二人のオルフェウスがいた訳です。雛沢奏人と雛沢貴樹というね。
作品ロゴ
思い切り私のお手製ですw
が、それでも少なからず明確な意味が込められています。
真ん中にある卵。作中では世界卵理論と言及されていました(後で話します)。ですがこれ、見方によれば別の物にも見えないでしょうか?
縦長過ぎたかなw 「月」に見えた人いませんか?
そして、「月」は何の象徴と呼ばれているか、ご存知でしょうか?
───不条理、不可能、死、再生。
サマセット・モームの「月と六ペンス」、「竹取物語」のかぐや姫、20世紀怪奇文学のクトゥルフ神話など。もしこれが分かる人がいれば、死と再生の神と考えられるオルフェウスの出現を予感したり、物語の全容にいち早く触れる事も出来たかもしれません。
一年前、タイトルとロゴでネタバレと言ったのはこれが理由です。
キャッチコピーについて
───惨劇は、今一度繰り返す。
この惨劇とは、大きく「現実」という言葉で言い換えられます。
が、細かに見ると三つの意味が含まれています。
-
雛沢貴樹を失うこと
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オカルト研究会を失うこと(小鞠島連続殺人事件)
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過酷な世界に向き合うこと
決してペシミスト的な考えを意図してはいません。物語終了時の奏人も惨劇とは思っていないでしょう。ただ、見方によっては、彼の歩みが惨劇と捉える人もいるかもしれません。後単純にキャッチーで格好良い。真理探究というテーマにも合いそう、って感じです。
元々ボイスドラマ用じゃなかった件
もう趣旨言ってるじゃん。
忘却のオルフェウスというお話ですが、元々ボイスドラマ用に製作はしていませんでした。複数名の方からノベルゲームっぽいと言われましたが、その通りでそもそもノベルゲームシナリオとして、数年ほど前認(したた)めていた物です。
だからあんな一人称視点で、セリフ数が偏るんですよw
大元の設定を色々弄る羽目になったり、推理パートを簡素で、大幅に省略する事になったりと四苦八苦しました。(特に過去と一族事情)
ボイスドラマに対する見方がこの一年間で大分変化した事もあり、歯に衣着せず、今現在の所感を述べれば、今回の物語のように、私の書きたい物語を表現する上でボイスドラマでは物足りなさ過ぎます。
ただ、ボイスドラマでやってみたいと思った過去の自分を否定する気もなければ勿論、ボイスドラマが嫌いになったという訳でもありません。この作品から生まれた繋がりや気付き、次への指標があります。それだけで充分ありがたく感じています。
忘却のオルフェウス、大雑把な年表
大雑把な年表です。
釈放された際の年表を伏せていますが、特に理由はありません。
後、雛沢奏人の記憶喪失時の病名は、全生活史健忘となります。記憶にはエピソード記憶と意味記憶がありますが、前者が欠落しているような状態になります。
1995年:雛沢貴樹死去/花ノ宮一族壊滅
1996年:小鞠島連続殺人事件発生/雛沢奏人自殺未遂
~1997年:雛沢奏人、昏睡から復活/記憶喪失(病名:全生活史健忘)
2000年:雛沢奏人、記憶再生装置オルフェウス発明
物語開始地点
200?年:雛沢奏人、釈放
物語終了地点
再生編のオルフェウスは一体何者なのか
再生編にて登場したオルフェウスは、最終回にて雛沢貴樹である事が明かされました。
ただ、再生編は雛沢貴樹の記憶世界にて繰り広げられる物語です。その為、正確には雛沢奏人の記憶から形成された雛沢貴樹の記録である筈です。
にも関わらず、まるで自我があるかのように振る舞い、奏人を導いてきました。死んだ筈の人間が再生し、自我を宿して目の前に現れた。
生前の雛沢貴樹が本当に復活したのか、それともまた別の何かなのか。
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聴いてた音楽など
んな事聴きたくねぇとか言わないで(涙)
忘却のオルフェウスを執筆していた際に聴いていた音楽になります。
全体的に暗めの音楽になるのは仕方がありませんが、良ければ。
天野月 MV『鳥籠 —in this cage—』
ELFENSJóN(エルフェンシオン)『ORPHEUS』
いとうかなこ Silent Wind Bell
語られなかった事件/今後について
作品全体を通して、語られなかった事件や事柄が幾つか存在します。
花ノ宮一族とは。
花ノ宮一族壊滅事件。
世界卵理論。
オルフェウスの碑文。
触れないで放置のままでも良いかな、と少し前までは思ってました。
思っていましたが、設定を殺すのは勿体ないので続編作ります。というか作ってます。
タイトルも決定しています。
Ars/Magia(アルスマギア)
ただ、見積もりの段階で、一人では作れない事が確定しています。大規模な作品になるので、その為の準備期間にかなりの月日を掛けてしまうかと思われますが、今しばらくお待ちいただけたらと思っています。
よろしくお願いします。
と、いう事で今後はArs/Magiaの制作と所属するサークル側でのノベルゲーム制作を行う為、しばらく企画者の立場からは離させていただきます。
後者は年末前には告知があるかも、、、以上です!